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繰り返すお子さんの発熱の原因は?

お子さんが発熱を繰り返すとき

お子さんが発熱を繰り返すときお子さんは免疫システムがまだ完成していないため、成人と比べて発熱しやすい状態にあります。お子さんの発熱は緊急に対応する必要のないケースが多いため、あわてずに、しかししっかりと見守ってあげることが大切です。


速やかな受診が必要なお子さんの発熱

以下のような項目に1つでも当てはまる場合は、すみやかに医療機関を受診してください。

  • 生後3か月未満で、38℃以上の高熱が出た
  • 発熱とともに痙攣や呼吸困難を起こしている
  • 発熱とともにすっかり元気をなくしている
  • 発熱とともに普段より尿の量・回数が減っている
  • 発熱とともに皮疹が出ている

繰り返すお子さんの発熱の原因は?

お子さんが発熱しやすい原因

生まれてすぐの赤ちゃんは、母体から免疫をうけついでいますが、だんだんその影響が消えていきます。しかし、免疫システムが未発達であるため、大人であれば問題にならないような病原体や異物の侵入によって、発熱が多くなります。その状態を繰り返すことによってだんだん免疫システムが発達していきます。


発熱をともないやすいお子さんの病気

お子さんがかかりやすい発熱をともなう病気の代表例を以下に説明していきます。

感染性の病気

インフルエンザ

インフルエンザウイルスによる感染症で、毎シーズン12月から3月ごろにかけて流向します。風邪のような症状もありますが、高熱、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感などの全身症状が強くでる傾向があります。6か月のお子さんからワクチンを受けることができます。予防接種によってインフルエンザにかかりにくくなり、かかっても軽症ですむようになります。

インフルエンザ

RSウイルス感染症

RSウイルスは、かなり一般的なウイルスの1つですが感染力は高く、2歳までのほぼ100%のお子さんがこのRSウイルス感染症にかかります。1度だけではなく、なんども繰り返し感染し、風邪の症状を起こします。一般的には軽症ですみますが、お子さんの状態によってはヒューヒュー・ゼーゼーとした喘鳴をともなう呼吸困難などの重い症状となることもあります。とくに初感染の場合、重症化する傾向がありますので注意が必要です。

流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)

流行性耳下腺炎は、耳の下にある唾液腺(耳下腺)などが腫れることによって一般的におたふく風邪とも呼ばれています。原因はムンプスウイルスによる感染症で、耳下腺の腫れのほかに高熱を発することもあります。重症化して髄膜炎を併発すると頭痛や嘔吐がおこります。任意接種ですがワクチンの接種が予防に有効です。

麻疹(はしか)

麻疹ウイルスによる急性感染症で、非常に感染力が高く、主に飛沫感染および空気感染します。初期症状として38℃前後の発熱、咳、鼻水、結膜炎(目の充血)などの風邪に似た症状が2~4日続きます。その後、39~40℃の高熱とともに特徴的な赤い発疹が顔面から始まり、全身に広がります。この発疹を伴う症状は通常3~7日間持続します。合併症として中耳炎、肺炎、脳炎などが起こることがあり、特に乳幼児や成人で重症化のリスクが高くなります。予防には麻疹・風疹混合(MR)ワクチンが有効で、日本では定期接種となっているため、適切な時期に確実に接種することが重要です。

水痘(みずぼうそう)

水痘・帯状疱疹ウイルスによる感染症で、頭皮を含め全身に痒みをともなった水疱ができ、発熱する場合もあります。1週間程度でかさぶたとなって治りますが、ウイルスは身体の奥に潜み成人になって抵抗力が弱まると帯状疱疹を発症します。定期接種の水痘ワクチンによって予防・重症化の防止が期待できます。

突発性発疹

ヒトヘルペスウイルス6または7による感染症です。38℃以上の高熱が3日ほど続いた後、全身に発疹が出ます。3歳までに99%のお子さんが感染すると考えられていますが、感染しても症状のあらわれないケースもあります。重症化すると熱性痙攣を起こす可能性もあります。

咽頭結膜熱(プール熱)

アデノウイルスによる感染症で、プールなどで感染することが多いため、プール熱とも呼ばれる夏風邪の一種です。のどが赤く腫れ、4~7日ほどの間熱が続きます。また結膜炎や頭痛などを伴う場合もあります。アデノウイルスには多くの亜型があり、はやり目などの他、肺炎や出血性膀胱炎などを起こすケースもあります。

ヘルパンギーナ

エンテロウイルスの仲間に感染することで起こる感染症です。夏風邪の一種で、感染すると発熱やのどの腫れのほかに、水疱性の口内炎あらわれることが特徴的です。熱は一般的には2~3日で下がります。

溶連菌感染症

溶連菌、正しくは溶血性連鎖球菌に感染することで起こる感染症です。高熱、のどの腫れ・痛み・白苔の付着、リンパ節の腫れなどの症状があらわれますが、咳などはあまりでません。10日ほど抗菌薬を飲み続けて完全に治しておくことが大切です。

その他の病気

お子さんがかかりやすい疾患としては、その他熱中症、自己免疫疾患、川崎病、甲状腺疾患などがあります。これらの疾患で発熱がみられるケースもありますので、熱が続く、何度も発熱を繰り返すなどの場合、放置せず、お早めにご相談ください。


お子さんが発熱したときの対応について

水分をこまめに補給しましょう

水分をこまめに補給しましょう お子さんは、成人と比べて体重あたりの水分の割合が高く、また知らない間に汗などで発散される水分量が多く、さらに腎機能が未発達であるため、脱水をおこす可能性が高くなっています。とくに発熱時は水分が失われやすいため、こまめに水分補給を行って脱水症状を起こさないように気をつけてあげることが大切です。授乳期であれば母乳やミルクなどをいつもより多めにあげましょう。離乳期以降は経口補水液、麦茶、白湯といったお腹に負担の少ない飲み物を中心に水分を補給してあげてください。下痢や嘔吐がある場合は低血糖を防ぐために糖分が含まれる飲み物を用意しましょう。

経口補水液をご自宅でつくりましょう

湯冷ましを用意しましょう。湯冷まし1Lあたり食塩小さじ半分(3g)、砂糖大さじ4と2分の1(40g)を入れてよく混ぜて溶かし、常温になるまで冷まします。
お好みでレモンの絞り汁などを入れることも可能です。多めに作りすぎないようにしましょう。

発熱の際の授乳について

発熱時でも母乳やミルクは普段どおりに飲ませるようにしましょう。ミルクは普段どおりの濃さを保ち、薄める必要はありません。発熱であまり飲まない場合は経口補水液などを飲ませてあげるようにしましょう。

発熱時の体温調節と身体の冷やし方

熱が上がったばかりのタイミングでは、体温調節がまだ発達しきっていないお子さんは、悪寒を起こしてふるえるようなことがよくあります。そんな場合、身体を冷やさないよう、毛布や布団をかけてあげてください。だんだんふるえが治まってくると、顔などに赤みがさしてきます。その段階になったら、熱がこもらないよう布団や毛布などは薄めのものにとりかえてあげましょう。
どっと汗をかいてくると体温が下がり始めます。そのままにすると、濡れて冷えてしまうこともあります。こまめに汗を拭いてあげて湿った着衣は新しいものにとりかえましょう。
無理に身体を冷やしてあげる必要はありませんが、冷やすと楽になるようなケースでは、首、わきのした、太股の付け根といった、体幹に近い部位を冷感ジェルシートや保冷剤などで冷やしてあげると良いでしょう。保冷剤の場合は薄いタオルや手ぬぐいなどでくるので冷やすようにしましょう。

解熱剤の与え方

発熱は身体が細菌などと闘っている結果のあらわれです。体力面や気力面(元気さ)などがある程度残っているようであれば、むりに解熱剤を使って熱を下げる必要はありません。しかし、しっかりと眠れないほどの痛みや疲労などがある、ぐったりして水分補給ができないといった場合は、解熱剤を使って熱を下げることも考える必要があります。
解熱剤として、お子さんには副作用が少ないと考えられているアセトアミノフェン(カロナール)を処方することが多いのですが、ご家庭用の常備薬としては「小児用バファリン」などアセトアミノフェンの単一配合薬を使用するとよいでしょう。

発熱の際のお子さんの食事について

発熱時には、大人でも食欲が下がるものです。お子さんの場合さらに食欲が低下することがあります。そんな際はまずは水分補給をこころがけましょう。
しかし、乳幼児の場合、まだ身体の機能が完成していないため、体内に脂肪やグリコーゲンなどの形でうまくエネルギーが蓄積できない傾向があります。その場合食事が不足すると低血糖に陥りやすくなりますので、糖分を含んだ水分(スポーツドリンクや経口補水液、スープなど)を多めに補給してあげてください。


お子さんの発熱Q&A

熱が出たり下がったり変動します。どんなタイミングで受診すれば良いでしょう?

人間の体温は、朝が低くなりやすく、だんだんと上昇して、夕方になると一番高くなる傾向があります。それに食事、運動、入浴といった生活の中での動きが加わると、体温はさらに上昇する傾向があります。こうした体温リズムは視床下部がつかさどっており、視床下部の指令によって自律神経や甲状腺ホルモンなどの内分泌系が働き、発汗などによる放熱、逆に汗を抑えて蓄熱といった体温調節を行っているのです。この体温リズムは発熱時でも働いていますので、朝はちょっとした熱だったものが、夕方になると高熱になってしまうということも起こり得ます。
乳幼児は、まだこの体温調節の仕組みが完成しておらず、ちょっとした刺激があると高熱を発してしまうようなこともあります。ただし、概日の人間の体温リズムと体温の変化のパターンはある程度一定していますので、お子さんの体温を毎日数回定時に計っておき、お子さん特有のリズムのパターンを確認しておくと、体温変化のパターンもわかるようになります。
お子さんの体温調節リズムが完成していないということからくる発熱は、それほど心配のないケースも多く、普段のように遊んでいたり、機嫌が悪くなかったりしている場合は、熱があっても様子をみてよいことが多くなっています。一方で、普段元気なのにぐったりしている、尿の量がいつもより少ない、回数が少ない、呼びかけに反応が薄いなど、普段と少しでも異なった様子があるときは、すみやかに医師に相談するようにしましょう。

子どもが発熱しているのですが入浴させても大丈夫ですか?

入浴によって、心肺機能などが亢進されることで、運動したと同じように体力が消耗します。そのため、お子さんが高熱(38.5℃以上)を発しているようなときは、入浴は控えるほうがよいでしょう。また発汗がひどいようでしたら、シャワー浴で軽く汗を流すだけに留めるのも良いでしょう。
それほど高い熱ではなく、機嫌も悪くない、よく遊んでいるなどといった状態でしたら、軽く入浴させても大丈夫ですが、熱い湯や長湯は厳禁です。ぬるめのお湯に設定し、短時間からだを浸す程度にとどめておきましょう。なお脱水に気をつけて、入浴前には水分を補給しておき、お風呂からあがったら、湯冷めを避けるため、すぐにしっかりと身体を拭いてパジャマや部屋着などを着せてください。

なぜ、風邪など細菌やウイルスに感染すると発熱するのですか?

細菌やウイルスなど異物が身体に入りこむと、それと闘い身体から排除しようとして免疫システムが働きます。この免疫システムは体温が高いほど働きが良くなるため、体温を調節するための視床下部の体温中枢は、体温を上げるよう指令を出します。すると筋肉がふるえたり、血管が収縮したりして発熱を促し、体温が発散されることを防ぐ働きをします。これによって体温は上がります。発熱のきざしとして、悪寒によってふるえたり、手足が冷たく感じたりするのはこの働きによります。また、病原体、とくにウイルスは一定以上の熱には弱いため発熱によってウイルスの増殖や活動を低下させる働きもあります。発熱と身体の免疫システムはこのように深い関係にあるため、安易に解熱剤などをすぐに使わないほうが良い場合もあるのです。

発熱がみられた場合は、すぐに抗菌薬を処方していただきたいのですが・・・

抗菌薬(抗生剤など)は細菌に対して効力を発揮する薬です。しかし風邪の多くはウイルス感染によるもので、風邪の場合抗生剤などを処方しても効果を得られないことが多いです。さらに抗菌薬は多用することで、その薬に対する耐性菌ができやすくなってしまいます。また、抗菌薬はあらゆる細菌が対象となるため、消化や栄養分の分解に必要な腸内の細菌叢のバランスを崩してしまう可能性もあります。
そのため、医療機関では必要と判断した範囲内でしか抗菌薬を処方しません。そのかわりに重症化を防ぐための対症的なお薬などを使って、体力の消耗を防いでいますので、抗菌薬は細菌感染がはっきりとしていて必要な場合のみの処方にとしています。

インフルエンザの可能性があり検査をすると言われましたが、検査を受けたほうがいいですか?

インフルエンザは感染力が高く、知らずに放置することで多くの人に広めてしまう可能性もあります。しかも初期の症状としては普通の風邪と鑑別しにくいケースが多いため、インフルエンザが流行する季節に風邪の症状でご来院された方には、インフルエンザの迅速検査をお勧めしています。ただし発熱などの症状があらわれて12時間前後経過していなければ、鼻ぬぐい法などの迅速検査による正確な判定が難しいという難点もあります。

高熱を発しています、脳に影響があるのではないかと心配なのですが

高熱には2つのケースが考えられます。1つは脳の体温中枢が必要性を感知して体温を上げるように指示している「普通の発熱」のケースです。この場合、視床下部の指令によって体温の正常のコントロールの範囲内で体温が上がっていますので、脳に危険が及ぶと考えられる42℃以上に体温が上がる心配はなく、脳への影響はまずないと考えられます。
一方、熱中症などを起こした場合は、通常の体温コントロールの範囲内ではなく、うつ熱という体温コントロールを離れた状態で高熱となってしまいます。この場合、脳へ影響のある42℃以上に体温が上がってしまうこともあり、脳に障害が残ることや、最悪の場合は生命に危険を及ぶすこともあります。

熱がでて、手足がふるえているのですが、痙攣状態なのでしょうか?

痙攣は手足の硬直やふるえといった症状だけではなく、意識レベルの低下などをともなう症状のことです。意識を失っている、呼びかけに反応しない、呼んでも目が反応しないといった状態は痙攣の可能性が高くなります。
一方、意識があり、呼びかけに反応する、呼ばれたら目線をあわせるなどの場合は悪寒によるふるえの可能性が高く様子をみても良い状態といえます。
発熱にともなうふるえなどが認められる場合は、お子さんの意識レベルに注目するようにしてください。