慢性腎臓病とは
慢性腎臓病は、腎臓の働きの低下が3ヶ月以上続く状態を言います。腎臓は老廃物の排泄、体液の調整、血圧の調整など重要な役割を担っていますが、これらの機能が低下していきます。末期の状態(末期腎不全)になると、これらの機能が不足するため、血液透析などの腎代替療法が必要となります。
慢性腎臓病の罹患率
日本において、成人の8人に1人が慢性腎臓病を認めていると言われています。高齢になるほど罹患率は上昇し、80歳以上では2人に1人が慢性腎臓病と言われています。
慢性腎臓病は増悪するとどうなる?
慢性腎臓病初期段階では自覚症状をほとんど認めません。しかし進行すると、以下のような症状が現れることがあります。
むくみ(浮腫)
特に両足(下肢)に認めやすいです。指で押すと痕が残る浮腫(圧痕性浮腫)を認めますが、増悪すると全身(両腕や顔まで)に浮腫を認めます。更に悪化すると肺水腫(肺に水が溜まる)を認めて息苦しさや呼吸困難を認めます。
全身のだるさ(倦怠感)
腎機能低下により、老廃物の排泄の低下により体内に尿毒素を蓄積していき症状(尿毒症)が現れます。また、慢性腎臓病による腎性貧血や体液貯留(むくみなど)も倦怠感の症状を認めることがあります。
慢性腎臓病の原因と検査
慢性腎臓病の主な原因は以下になります。(それ以外の原因疾患もあります)
一次性
慢性糸球体腎炎
老廃物などの排泄を行うフィルター(ろ過)の役割である糸球体に炎症が慢性的に続く状態です。
これにより尿潜血や尿タンパクを出現します。尿タンパクが持続的に認めることで腎機能の悪化につながります。
多発性嚢胞腎
遺伝性疾患で、腎臓に多数の嚢胞が形成されます。肝臓にも多発性嚢胞を認めたり、脳動脈瘤を認めることがあります。家族歴(両親が多発性嚢胞腎である)、超音波検査やMRI検査で診断や治療方針を決めます。
IgA腎症
糸球体腎炎の一つで免疫グロブリン(IgA)が糸球体に沈着し、炎症を引き起こします。
IgA腎症は、早期の段階で治療介入することで慢性腎臓病に防ぐことが期待できます。そのため尿潜血や尿タンパクが出現した場合は、早めに医療機関に受診することが大切です。
二次性
糖尿病
糖尿病性腎症は、慢性腎臓病の最も一般的な原因です。
高血圧
腎硬化症を発症します。長期間のコントロール不良な高血圧により、腎機能を低下させます。
近年、慢性腎臓病の原因疾患として増加傾向です。原因疾患である高血圧の治療を十分にすることが大切です。
全身性エリテマトーデス(SLE)
自己免疫疾患の一つで、ループス腎炎を引き起こします。それにより尿タンパクや尿潜血を認めます。
場合によってはネフローゼ症候群を発症し、浮腫を認めます。原因疾患の診断・治療が大切になります。
痛風(高尿酸血症)
尿酸塩結晶による尿細管間質性腎炎を認めます(痛風腎)。原疾患の治療が大切になります。
薬剤性腎障害
サプリメントや薬により尿細管間質性腎炎を認めたり、腎血流低下による腎障害を認めます。
定期的な腎機能のチェックを行うことで早期に診断ができます。
その他
腎動脈狭窄
腎臓への血流低下で腎機能低下を認めます。腹部超音波検査やMRIで診断を行います。
閉塞性尿路疾患
尿路結石、前立腺肥大症などによる尿路の閉塞が原因です。
閉塞の解除のため、膀胱留置カテーテルや尿管ステント留置が必要になることがあります。
診断には、主に血液検査(クレアチニン、シスタチンCなど)、尿検査(尿タンパク、尿潜血など)、超音波検査(腎臓の大きさが萎縮しているなど)や腎生検(顕微鏡で腎臓の組織を観察します)を行います。
慢性腎臓病の治療法
慢性腎臓病の治療は、現時点では根治的治療はありません。そのため、原因となる病気(糖尿病や高血圧など)の管理が基本です。また、食事療法(塩分・たんぱく質の制限)を腎機能の低下に合わせて行います。当院では管理栄養士とともに栄養指導を行います。また、慢性腎臓病が進行した場合は、貧血に対する治療(エリスロポエチン製剤や鉄剤など)や、カルシウム・リンの管理なども行われます。
慢性腎臓病を悪化させないためには
慢性腎臓病の進行を遅らせるためには、以下のことが重要です。
- 健康的な生活習慣(バランスの良い食事、適度な運動、禁煙、睡眠時間の確保など)
- 原因となる病気(糖尿病、高血圧など)の適切な管理
- 定期的な検査と治療の継続
慢性腎臓病は自覚症状に乏しく、進行すると透析療法を含めた腎代替療法が必要になることもあります。定期的な健診などの検査と適切な治療、生活習慣の改善が重要です。ご自身の腎臓に問題ないか腎機能測定ツール)で確認してみてください(健診などの血液検査結果があれば測定できます)。ご不明な点は当院にご相談ください。
参考文献
- 日本腎臓学会編. CKD診療ガイド2023. 東京医学社, 2023.