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コラム

腎臓病はコーヒーを飲めないのか?

腎臓

腎臓病でもコーヒーを飲めるのか?

 

多くの腎臓病患者さんが気になる質問の一つに、「コーヒーを飲んでもいいのか?」というものがあります。コーヒーは多くの人にとって日常的な飲み物ですが、腎臓病患者さんにとっては注意が必要な場合があります。

腎臓病でもコーヒーは飲むことはできますが...

結論から言えば、腎臓病患者さんもコーヒーを飲むことは可能です。ただし、いくつかの注意点があります。

カリウム含有量:
コーヒーには多くのカリウムが含まれています。腎臓病患者さんは、カリウムの摂取に注意が必要な場合があります。

 

血圧への影響:
カフェインは一時的に血圧を上昇させる可能性があります。

 

これらの点を考慮しつつ、医師と相談しながら適切な量を決めることが大切です。

腎不全のステージによってカリウム制限は異なる

 腎不全には重症度に合わせて大きく5段階のステージ(Grade)に分けられます。Gradeによってカリウム制限の程度が異なります。

正常~軽度腎不全(G1-3a

通常、厳しいカリウム制限は必要ありません。

中等度腎不全(G3b

カリウムの摂取に注意が必要になってきます。2,000mg/日以下のカリウム制限が望ましいとされています。

高度~末期腎不全(G 4-5

厳格なカリウム制限が必要になることが多いです。1,500mg/日以下のカリウム制限が望ましいとされています。

*透析患者は2000-3000mg/日のカリウム制限になります。

コーヒーを含む食事全体のカリウム量を考慮しながら、適切な摂取量を決めていくことが重要です。

コーヒーのカリウム含有量は?

コーヒーのカリウム含有量は、抽出方法によって異なります:

インスタントコーヒー(100ml):約60-80mg
ドリップコーヒー(100ml):約60mg

他の飲み物(例:紅茶(100ml)約30mg)よりカリウム含有量が多いため、ご自身の腎臓の状態にあわせて摂取する必要があります。

ここからは私の個人的意見になりますが、患者さんによってカリウムの排泄量やコーヒー以外で1日にどれだけカリウム摂取するかでカリウム制限をするべきかを考える必要があります。そのため、定期的な検査と評価により、必要に応じてカリウム制限を調整することで、より柔軟で個別化された管理が可能になります。これにより、不必要に厳しい制限を避けつつ、安全に過ごすことができます。

末期腎不全でも血液のカリウムが低い場合がある

末期腎不全の患者さんでも、必ずしも血液中のカリウム値が高いとは限りません。以下のような場合、カリウム値が低くなることがあります。

  • 利尿剤の使用
  • 下痢や嘔吐による喪失
  • 栄養不良

このような場合、むしろカリウムの摂取が必要になることもあります。定期的な血液検査と主治医との相談が不可欠です。

血液透析患者ではカリウム制限が大切

血液透析を受けている患者さんは、特にカリウム制限が必要です。理由は以下の通りです。

  • 血液透析患者では、ほぼ自尿がないため、カリウムが排泄されることはありません。通常、血液透析は週に3回行いますが、透析をしていない時はカリウムが体内に蓄積していきます。
  • カリウムの過剰な摂取や体内への蓄積は、心臓のリズムに影響を与えて致死的な不整脈を招く可能性があります。

 そのため、コーヒーを飲む場合はカリウム制限内での摂取を心掛ける必要があります。

腹膜透析患者は、むしろカリウムを多くとった方がいい?

 腹膜透析患者さんの場合、血液透析患者さんとは異なり、カリウムの管理が比較的容易です。理由は以下の通りです。

  • 継続的な透析:腹膜透析は毎日行うため、カリウムの蓄積が少ないです。
  • カリウム喪失:腹膜透析液によってカリウムが失われることがあります。

そのため、腹膜透析患者さんの中には、むしろカリウムを積極的に摂取する必要がある方もいます。ただし、これは個人差が大きいので、必ず医師と相談しながら適切な摂取量を決めてください。

 

腎不全患者でどんなものが飲めるの?

 コーヒー以外にも、腎不全患者さんが飲み物はたくさんあります。但し、水分制限がある場合は注意が必要です。

お茶(緑茶、紅茶など):

カフェインは含まれますが、コーヒーよりもカリウムが少ないです。しかし、玉露入りのお茶はカリウムが多いため注意してください。

ハーブティー:

カフェインフリーで、様々な味を楽しめます。

水:

最も安全ではありますが、飲水制限がある場合は気を付ける必要があります。

果物ジュース:

カリウムが多い場合があるので、量に注意が必要です。

炭酸水:

種類によってカリウムの含有量が異なります。基本的には飲水可能です。

 

これらの飲み物も、適量を守ることが大切です。特に果物ジュースは糖分とカリウムが多いので注意が必要です。

 

カフェインの摂りすぎに注意!

カフェインの過剰摂取は、腎臓病患者さんに限らず避けるべきです。

1日のカフェイン摂取量

健康な成人で400mg以下が推奨されていますが、腎臓病患者さんはさらに控えめにすることが望ましいでしょう。

 

 

コーヒーはいつ摂った方がいい?

夜にコーヒー(カフェイン)を摂るのは睡眠の質と量に悪影響を及ぼすことがわかっていますが、朝に摂取するのも以下の理由から避けるべきとされています。

体内のコルチゾールへの影響

朝は自然とコルチゾール(ストレスホルモン)レベルが高くなります。研究によると、カフェインはコルチゾール分泌をさらに促進する可能性があります。これにより、朝のカフェイン摂取は体のストレス反応を不必要に高める可能性があります。

 カフェインへの耐性

朝の早い時間にカフェインを摂取し続けると、その効果に対する耐性が形成される可能性が示唆されています。これにより、カフェインの覚醒効果が徐々に低下する可能性があります。

体内時計への影響

朝のカフェイン摂取が体内時計(サーカディアンリズム)に影響を与え、睡眠-覚醒サイクルを乱す可能性があることが示されています。

血糖値への影響

コーヒーはインスリンの働きを悪くしてしまい、朝食前または朝食時のカフェイン摂取が、食後の血糖値上昇を増強する可能性があります。

 

昼食後のカフェイン摂取と認知機能

昼食後のカフェイン摂取が認知機能を向上させる可能性があると報告されています。ある研究では、昼食後のカフェイン摂取(約200mg)が、特に注意力と集中力を向上させることが報告されています。この効果は、午後の眠気を軽減し、生産性を維持するのに役立つ可能性があります。

運動前のカフェイン摂取と脂肪燃焼

運動前のカフェイン摂取が脂肪燃焼と減量に効果的であるという研究結果もあります。メタ分析によると、運動前のカフェイン摂取(3-6 mg/体重kg)が脂肪酸化を促進し、運動のエネルギー消費を増加させることが示されています。また、カフェインが代謝率を上げ、脂肪燃焼を促進することで、体重管理に寄与する可能性が示唆されています。

 

まとめ

腎臓病患者さんにとって、コーヒーを完全に禁止する必要はありませんが、適切な管理が必要です。以下の点を心がけましょう:

  1. 医師や栄養士と相談:自分の腎機能や全体的な健康状態に基づいて、適切な摂取量を決めましょう。
  2. カリウム制限を意識:コーヒーだけでなく、食事全体でのカリウム摂取量を管理しましょう。
  3. カフェイン摂取に注意:過剰摂取を避け、適切なタイミングで飲みましょう。
  4. 代替飲料を検討:コーヒー以外の飲み物も取り入れ、バランスの取れた水分摂取を心がけましょう。
  5. 定期的な検査:血液検査や尿検査を定期的に受け、電解質バランスをチェックしましょう。

腎臓病と付き合いながらも、質の高い生活を送ることは可能です。コーヒーを含む飲み物の選択も、その一部です。自分の体調をよく観察し、医療専門家のアドバイスを受けながら、日常生活を送りましょう。また、コーヒーはカフェインが入っていますので、カリウムに関係なく、適切な量を守ることが大切です。

 

 

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