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コラム

eGFRとは?腎臓の健康を知る重要な指標

腎臓

 eGFRとは?腎臓の健康を知る重要な指標

 私たちの身体には、様々な臓器があり、それぞれが重要な役割を果たしています。その中でも腎臓は、体内の老廃物を排出し、水分やミネラルのバランスを調整する重要な臓器です。しかし、腎臓の機能が低下しても、初期段階では自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに進行してしまうことがあります。

そこで重要になるのが、定期的な健康診断などによる腎機能のチェックです。腎機能を評価する指標の一つに「eGFR(推算糸球体濾過量)」があります。この記事では、eGFRとは何か、どのように腎機能と関係しているのか、そして自分のeGFRをどのように解釈すればよいのかについて、詳しく解説していきます。

eGFRとは

eGFRは「estimated Glomerular Filtration Rate」の略で、日本語では「推算糸球体濾過量」と呼ばれます。これは、腎臓の働きを数値化したもので、1分間あたりに腎臓が濾過する血液の量を表します。

1つの腎臓の中には、「糸球体」と呼ばれる小さな濾過装置(=フィルター)が約100万個あります(腎臓は2つあるので計200万個の糸球体があります)。この糸球体が血液をろ過し、老廃物を尿として排出する一方で、必要な栄養素は体内に戻します。eGFRは、この糸球体全体の機能を反映する指標なのです。

eGFRは、血液検査で測定される血清クレアチニン値を基に計算されます。クレアチニンは、筋肉で産生され、通常は腎臓から排出される物質です。腎機能が低下すると、クレアチニンが体内に蓄積されるため、血清クレアチニン値が上昇します。

eGFRの計算方法

 eGFRの計算には、血清クレアチニン値のほか、年齢、性別、人種などの要素が考慮されます。日本人向けに開発された計算式は以下の通りです:

男性の場合

eGFR = 194 × (血清クレアチニン値)^(-1.094) × (年齢)^(-0.287)

女性の場合

eGFR = 194 × (血清クレアチニン値)^(-1.094) × (年齢)^(-0.287) × 0.739

この計算式により、eGFRの単位は「mL//1.73m²」で表されます。1.73m²は、標準的な体表面積を示しています。

eGFRと腎機能の関係

eGFRは、腎機能を直接的に表す指標です。eGFRが高いほど、腎臓の濾過機能が良好であることを示します。逆に、eGFRが低くなるほど、腎機能の低下が進行していることを意味します。

腎臓は、片方の腎臓を失っても、残りの腎臓で十分な機能を維持できることがあります。そのため、腎機能が50%以下に低下しても、日常生活に支障をきたすような症状が現れないことがよくあります。

しかし、eGFRが徐々に低下していく場合、それは慢性腎臓病(CKD)の進行を示唆している可能性があります。CKDは、長期間にわたって腎臓の機能が徐々に失われていく病態を指します。早期発見と適切な治療が重要であり、そのためにもeGFRの定期的なチェックが欠かせません。

eGFRの正常値と腎機能障害の段階

eGFRの値に基づくと、腎機能の状態を以下のように分類することができます:

G1(正常または高値) 90 mL//1.73m²以上
G2(正常または軽度低下) 60-89 mL//1.73m²
G3a(軽度~中等度低下) 45-59 mL//1.73m²
G3b(中等度~高度低下) 30-44 mL//1.73m²
G4(高度低下) 15-29 mL//1.73m²
G5(末期腎不全) 15 mL//1.73m²未満

ただし、年齢とともに腎機能は自然に低下していくため、高齢者の場合は、やや低めの値でも必ずしも異常とは限りません。

これらの値は目安であり、個人差があることに注意が必要です。また、1回の検査結果だけでなく、経時的な変化を見ることが重要です。

eGFR低い≠腎機能が悪い?
eGFRの限界とクレアチニンクリアランス

 eGFRは腎機能を評価する上で非常に有用な指標ですが、いくつかの状況下では腎機能を正確に反映しない場合があります。このような場合、腎機能が過小評価または過大評価される可能性があります。

 

実際の腎機能より「悪い」と判断されてしまう場合

  • 筋肉量が多い人(アスリートなど)筋肉量が多いと、クレアチニン産生量が増加し、血清クレアチニン値が高くなります。これにより、実際の腎機能よりもeGFRが低く算出される可能性があります。

                   

                  実際の腎機能より「良い」と判断されてしまう場合

                  • 高齢者:高齢になると筋肉量が減少するため、クレアチニン産生量が減少します。この場合、血清クレアチニン値が正常でも、実際の腎機能は低下している可能性があり、eGFRが高く算出されます。
                  • ベジタリアン:動物性タンパク質の摂取が少ないと、クレアチニン産生量が減少し、血清クレアチニン値が低くなる傾向があります。そのため、実際の腎機能よりもeGFRが高く算出される可能性があります。
                  • 低栄養状態の人:筋肉量が少ない場合、クレアチニン産生量が減少し、血清クレアチニン値が低くなります。これにより、実際の腎機能よりもeGFRが高く算出される可能性があります。

                  • 肝硬変患者:肝機能障害によりクレアチニン産生が減少することがあります。これにより、実際の腎機能よりもeGFRが高く算出される可能性があります。

                   

                  • 切断や麻痺のある患者:影響を受けた部位の筋肉量が減少し、クレアチニン産生量が減少します。これにより、実際の腎機能よりもeGFRが高く算出される可能性があります。

                  このような場合、より正確な腎機能評価が必要となることがあります。その際に用いられるのが、クレアチニンクリアランス(Ccr)の測定です。

                  クレアチニンクリアランス(Ccr)の測定

                  クレアチニンクリアランスは、24時間蓄尿検査と血液検査を組み合わせて測定します。この方法では、24時間の尿中クレアチニン排泄量と血清クレアチニン濃度を比較することで、より直接的に腎臓の濾過機能を評価することができます。

                  ただし、クレアチニンクリアランスの測定には24時間の正確な蓄尿が必要であり、患者の負担が大きいため、routine検査としては一般的ではありません。多くの場合、eGFRが腎機能評価の主要な指標として用いられ、必要に応じてクレアチニンクリアランスなどの追加検査が行われます。

                  まとめ

                  eGFRは、腎機能を評価する上で非常に重要な指標です。定期的にeGFRをチェックすることで、腎機能の状態を把握し、必要に応じて早期に対策を立てることができます。

                  腎機能の低下は、初期段階では自覚症状がほとんどないため、定期的な健康診断を受けることが大切です。eGFRの値が基準値よりも低い場合や、経時的に低下傾向にある場合は、医師に相談し、適切な対応を取ることが重要です。

                   

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