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コラム

クレアチニンを下げる薬はある?腎機能が低下したときに使用する治療薬

腎臓

クレアチニンを下げる薬はあるか?
腎機能が低下したときに使用する治療薬

 

腎臓は体内の老廃物を排出し、水分バランスを調整する重要な臓器です。腎機能が低下すると、老廃物や余分な水分が体内に蓄積し、様々な健康問題を引き起こします。この記事では、腎機能低下時の治療法や予防策について詳しく解説します。

腎機能は薬で回復する?

残念ながら、腎機能を直接回復させる薬は現在のところ存在しません腎機能を改善させる唯一の方法は腎移植になります。しかし、適切な治療や生活習慣の改善によって、腎機能の悪化を遅らせたり、症状を軽減したりすることは可能です。

腎機能低下の原因によっては、特定の治療薬が腎機能の保護や悪化の抑制につながることがあります。

例えば:

糖尿病性腎症:血糖コントロールのための薬物療法
高血圧性腎症:降圧薬による血圧管理
慢性糸球体腎炎:ステロイド剤や免疫抑制剤による炎症の抑制

これらの治療は、根本的な原因に対処することで、間接的に腎機能の保護や悪化の抑制につながります。

腎機能の悪化を防ぐには?

 腎機能の悪化を抑えるためには、以下のような総合的な管理が重要です:

a) 食事管理

塩分制限:

過剰な塩分摂取は血圧上昇や浮腫の原因となります。1日の塩分摂取量を6g未満に抑えましょう。

タンパク質制限:

腎機能低下時は、タンパク質の代謝物が体内に蓄積しやすくなります。どの程度腎機能が悪いかでタンパク質の制限量も異なりますので、医師および栄養士と相談し、適切なタンパク質摂取量を守りましょう。

カリウム制限:

腎機能が低下すると、体内に蓄積しやすくなります。野菜や果物の選び方、調理法に注意が必要です。(別ページ参照

水分管理:

尿量が減少している場合は、浮腫など体内に水分が貯留してしまうため、飲水量の調整が必要です。

b) 感染予防

腎機能が低下すると免疫力も低下するため、感染症にかかりやすくなります。なにかしらの感染症を発症することで更なる腎機能悪化を引き起こすことがあります。

以下の点に注意しましょう:

手洗い・うがいの徹底で感染予防をする
ワクチン接種(インフルエンザ、肺炎球菌など)で感染予防および重症化を防ぐ
早期に医療機関を受診(発熱や体調不良時)して重症化を防ぐ

c) 血圧管理

高血圧は腎機能低下の主要な原因の一つです。以下の方法で血圧管理に努めましょう:

定期的な血圧測定
降圧薬の適切な服用
減塩
適度な運動
ストレス管理

 

d)その他の重要な管理項目

 

禁煙:
喫煙は直接的な腎機能低下のリスクではありませんが、動脈硬化などにより腎機能悪化のリスクを高めます。
体重管理:
肥満は腎機能低下のリスク因子です。特にBMI 30以上の高度な肥満の場合は、肥満腎症を発症し、タンパク尿(特にアルブミン尿)の増加と腎機能の低下がみられます。これは、主に以下のことが考えられます。
・肥満により腎血流が増加し糸球体内圧が上昇する
・代謝異常により高血糖を認めることで腎障害を認める
・肥満に伴い増加した脂肪組織から炎症性サイトカインが分泌され、腎臓に炎症をもたらします。

当院では、減量内科外来を行っていますので、肥満が気になる方はご相談ください。

アルコール制限:
アルコールによる肝障害を認めると、肝腎症候群を引き起こすことがあります。これは、進行した肝硬変や急性肝不全の患者に発症する深刻な合併症です。
腎臓自体に明らかな障害がないにもかかわらず、急速に腎機能が低下します。主な特徴は、腎血流の著しい減少と腎臓の血管収縮であり、予後不良とされています。
また、中等量以上のアルコールの摂取(エタノール 20~30 g/日以上)は、タンパク尿を発症させて腎機能を悪化させる可能性があるため、アルコールの摂取量は少量程度に留める必要があります。
睡眠時間の確保:
短時間睡眠(5時間以下)はタンパク尿出現を認める可能性が報告されています。
定期的な検査:腎機能や電解質のチェックを欠かさず行いましょう。

 

腎機能を保つための薬は?

腎機能を保護し、悪化を遅らせるために使用される主な薬剤には以下のようなものがあります:

ACE阻害薬やARB

高血圧の治療薬でありますが、尿タンパクを減少させて腎臓を保護する効果があります。

SGLT2阻害薬

糖尿病の治療薬で、近位尿細管でのブドウ糖再吸収を抑制し、尿糖排泄を促進する作用があります。この作用により、糸球体内圧の低下、尿細管への負荷軽減、酸化ストレスの減少、炎症反応の抑制などが生じ、結果として腎機能低下の進行を抑制し、腎保護効果があります。

EPA/DHA製剤

魚油に豊富に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)などの n3 系脂肪酸は,脂質代謝改善作用,抗炎症作用などがあります。EPAが糖尿病性腎症患者のタンパク尿を減少させることが報告されています。

腎障害があれば早期発見が重要!

腎機能低下は初期段階では自覚症状がほとんどないため、定期的な健康診断が非常に重要です。以下の検査項目を確認するようにしてください。

- 血清クレアチニン値
- eGFR(推算糸球体濾過量)
- 尿蛋白(タンパク尿)
- 尿潜血

これらの値に異常が見られた場合は、速やかに医療機関に受診することが大切です。早期発見・早期治療により、腎機能の悪化を遅らせ、透析導入を遅らせることができる可能性があります。

 

まとめ

クレアチニンを直接下げる薬は存在しませんが、適切な治療と生活習慣の改善により、腎機能の悪化を抑制し、末期腎不全に至らずに生活を維持することが可能です。早期発見と継続的な管理が重要であり、定期的な通院が不可欠です。腎臓は一度失われた機能を取り戻すことが難しい臓器ですが、適切なケアにより、長期にわたって腎機能を維持することができます。

 

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