- 腹膜透析(Peritoneal Dialysis:PD)とは
- 腹膜透析と血液透析の主なメリットやデメリット
- 腹膜透析の治療法
- 日本における慢性透析療法と腹膜透析の現状
- 腹膜透析を希望される場合の確認事項
- 参考文献
腹膜透析(Peritoneal Dialysis:PD)とは
テルモ株式会社ホームページからの転載
腹膜透析は、末期腎不全に至った場合に必要になる慢性透析療法の1つです。
患者さん自身の腹膜を透析膜として利用することで自宅にて行うことができます。
お腹の中に透析vる操作を行い体内の老廃物や余分な水分を除去します。
透析液と自分のお腹をどうやってつなぐのか?
腹膜透析は、自分のお腹に留置されているカテーテルと透析液バッグをつなぐ必要があります。また、お腹に溜まった透析液(排液)を空のバッグとつなぐ必要があります。
つなぐときは、手動でつなぐ方法と機械を使ってつなぐ方法があります。
基本的に手動で行うことで問題はありませんが、つなぐ際に不潔になる恐れがある場合(手が不自由など)は機械を使うことをおすすめします。
テルモ株式会社ホームページからの転載
腹膜透析と血液透析の主なメリットやデメリット
腹膜透析
腹膜透析のメリット
- 自宅で治療ができ、通院の負担が少ない
- 旅行に行きやすい(血液透析患者さんも旅行に行けますが、旅行先の透析クリニックに通院する必要があります)
- 血液透析と比べて、治療中の血圧変動が少ない
- 食事や水分の制限が血液透析に比べて緩い(但し、患者さんにより異なります)
腹膜透析のデメリット
- 自己管理あるいは家族など周辺のサポートが必要である
- 腹膜炎のリスクがある
- カテーテルがお腹に留置されている
- 腹膜の劣化による合併症を防ぐために5-8年程度で血液透析あるいは腎移植に移行する必要がある。
血液透析
血液透析のメリット
- 医療機関で治療を受けるため、自己管理の負担が少ない
- 透析装置で管理をするため、正確に水分管理や老廃物の管理ができる
血液透析のデメリット
- 週3回程度の通院が必要である
- 透析中の血圧低下などの合併症リスクがある
- 食事や水分の制限が厳しい
腹膜透析の治療法
治療法は大きく2つあります。
連続携行式腹膜透析(CAPD)
テルモ株式会社ホームページからの転載
透析液をお腹に貯めて、排液(体外に出す)することを1日数回行います。
お腹に貯めておく時間は患者ごとに異なりますが、基本的には4-6時間です(就寝中に起きて交換する必要はありません)。自宅や仕事場などで交換できます。貯留本人あるいは家族で透析液の交換を行います。
自動腹膜透析(APD)
テルモ株式会社ホームページからの転載
就寝中に機械で自動的に透析液を数回交換します。CAPDのように日中に手動で交換する必要がありません。
但し、APD単独で老廃物および余分な水分の除去が足りない場合は、日中透析液をお腹に貯めておく必要があります。
テルモ株式会社ホームページからの転載
マイホームぴこ(自動腹膜灌流用装置)
テルモ株式会社ホームページからの転載
日本における慢性透析療法と腹膜透析の現状
慢性腎臓病が進行し末期腎不全になった場合は、腎代替療法である慢性透析療法(血液透析や腹膜透析)、腎移植が必要になります。
日本では、およそ34万人の患者さんが慢性透析療法を受けおり、国民359.6人に1人が透析患者に相当しております。また、人口100万にあたりの有病率は台湾・韓国に次いで世界3位です(2022年時点)。しかし、慢性透析療法は、血液透析と腹膜透析があるにもかかわらず、腹膜透析を受けている患者は10,531人しかいません(2022年時点)。
原因としては、様々あると思いますが、患者さんが腎代替療法(血液透析・腹膜透析・腎移植)の選択を受けるタイミングを逃していることも1つの要因です。理由としては、慢性腎臓病は無症状で進行することが多く、気づいたときには心不全や尿毒症で救急搬送となり緊急で血液透析が導入されることがあるからです。このことを防ぐには、慢性腎臓病と診断された場合は、定期的に通院することが大切です。計画的に準備することで、患者さんひとりひとりにあった腎代替療法が受けられるようになります。
当院では、平日19時までの診療に加えて、平日に医療機関受診が難しい腹膜透析患者さんにも受診できるように日曜日診療を行っています。
これにより少しでも腹膜透析を選ばれる患者さんが増えるように努めています。
腹膜透析を希望される場合の確認事項
- 腹膜透析を行える自宅環境か
- 腹膜透析の管理ができるか(本人の自己管理状況あるいは家族や訪問看護などのサポート状況)
- 全身状態の確認(手術ができるか把握する必要があります)
以上を確認した上で、連携先の医療機関で腹膜透析カテーテル留置の手術を行います。入院中に腹膜透析管理を学び、退院後は当院に月1-2回の通院となります。また、1年に1回は検査入院をする場合があります。
参考文献
- 日本透析医学会. 図説 わが国の慢性透析療法の現況 2022年12月31日現在. 日本透析医学会, 2020.