咳嗽(がいそう)とは
咳嗽(咳)は、体から異物を排出するための重要な反射です。しかし、咳が続くと呼吸困難、不眠、筋緊張により頭痛・肩こりや咳のしすぎによる肋骨骨折をきたし、QOLを低下させます。咳嗽は、単なる症状ではなく、病期を示唆する重要なサインです。適切な診断と治療により、咳嗽を改善し、QOLの向上を目指すことが重要です。長引く咳の主な原因は以下の6つです。
咳で肋骨痛くなる…?
咳により肋間神経痛や肋骨骨折を引き起こす場合があります。治療は、保存的治療(痛みに対して痛み止めを使ったり、バストバンドで固定をしたりします)になります。また、肋骨と胸骨をつなぐ肋軟骨の炎症(=肋軟骨炎)、筋肉痛、肺を包む胸膜の炎症(=胸膜炎)や気胸(肺の一部が虚脱することで、胸膜が刺激され痛みが生じます)でも肋骨付近の痛みを認めます。
咳が止まらない原因
感染後咳嗽
上気道炎や肺炎の後に咳が長引くことがあります。気道の炎症や過敏性が原因と考えられています。多くの場合、時間の経過とともに自然に改善します(コロナウイルス感染後後遺症による咳嗽は、半年程度続く場合もあります)。必要に応じて、咳止めや去痰薬が使用し症状の改善を図ります。
気管支炎・肺炎
細菌やウイルスによる気管支炎や肺炎で咳が止まらないことがあります。細菌性気管支炎や細菌性肺炎の場合は、胸部レントゲン検査や血液検査などで診断し、抗菌薬投与が必要なります。
喘息(咳喘息/気管支喘息)
喘息は、気管支の慢性的な炎症と過敏性によって引き起こされる疾患です。咳が主な症状である咳喘息と、喘鳴(ゼェーゼェーした音)や呼吸困難を伴う気管支喘息があります。当院では呼気NO検査を使用して診断を行います。吸入ステロイド薬や吸入気管支拡張薬が治療の中心となります。喘息は、アレルゲンに曝されて起こることがあります。喘息の診断がついた場合は、必要に応じてアレルギー検査を行います。喘息では、気道の炎症を抑制し、気管支の過敏性を改善することが重要です。適切な薬物療法とアレルゲン対策により、症状のコントロールを目指します。
逆流性食道炎(GERD)
逆流性食道炎の症状は、胸やけ、酸っぱいもの(胃酸)があがってくる、食後の胸痛などですが、胃酸が食道に逆流することで、咳が誘発されることがあります。逆流性食道炎の可能性がある場合は、上部内視鏡(胃カメラ)を行い確定診断します(当院には内視鏡設備がないため、連携医療機関に紹介となります)。胃酸分泌を抑制するためのプロトンポンプ阻害薬(PPI)や生活習慣の改善(食後2-3時間以内に臥床しない、脂質が多い食事を控えるなど)が治療の基本です。
後鼻漏
鼻腔や副鼻腔からの分泌物が咽頭に流れ込み、咳を引き起こすことがあります。後鼻漏の原因によって治療が異なりますが、内服や点鼻での治療後も改善が乏しい場合は耳鼻咽喉科での治療が必要です。
アレルギー性気管支炎
吸入性のアレルゲンによって引き起こされる気管支の炎症です。アレルギー性気管支炎では、アレルゲンの回避と薬物療法が重要です。原因アレルゲンを特定するためのアレルギー検査も有用です。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
COPDは、煙草の煙などを長期に吸入することで生じる肺の炎症性疾患です。咳嗽、喀痰、息切れなどの症状を呈します。呼吸機能検査や胸部CT検査などで診断します。禁煙が最も重要な治療であり、吸入薬
肺癌
肺癌は、咳嗽や血痰、息切れなどの症状を引き起こすことがあります。特に、喫煙者や高齢者では肺癌のリスクが高くなります。胸部レントゲン検査や胸部CT検査などの画像診断と、気管支鏡検査などによる病理診断が必要です。肺癌の治療は、病期や組織型、患者さんの全身状態などを考慮して、手術、放射線療法、化学療法などが選択されます。早期発見と適切な治療が予後の改善につながるため、長引く咳嗽や血痰などの症状がある場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。
心不全
心不全の症状として咳が出現することがあり、心臓喘息と呼ばれています。心不全では、左心機能の低下により肺うっ血が生じ、咳嗽だけではなく呼吸困難を引き起こします。胸部レントゲン検査、心臓超音波検査や血液検査などで診断します。治療は、利尿薬や血管拡張薬などの心不全治療が必要です。
長引く咳でお悩みの方へ
長引く咳嗽の治療には、原因疾患の特定が重要です。詳細な問診や身体所見、各種検査により、原因疾患を見極め、個々の患者さんに応じた治療を行うことが求められます。症状が長引く場合は、当院で治療が可能ですのでご相談ください。