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腎性貧血

腎性貧血とは

腎性貧血とは、慢性腎臓病の進行に伴って起こる貧血のことです。健康な腎臓では、エリスロポエチンというホルモンを産生し、骨髄での赤血球の産生を促進しています。しかし、慢性腎臓病が進行すると、腎臓でのエリスロポエチン産生が低下し、赤血球の産生が減少することで貧血が生じます。また、尿毒症物質の蓄積による造血障害も腎性貧血の原因の一つです。腎性貧血は、多くの慢性腎臓病患者に合併すると報告されており、患者のQOLを大きく低下させる要因となっています。

慢性腎臓病


腎性貧血の症状

疲労感や倦怠感が強く、日常生活に支障が出ることがあります。めまいや立ちくらみ、息切れも生じやすくなります。また、顔色が悪くなり、眼瞼(まぶた)裏が青白くなることもあります。重症の場合は、動悸や頭痛、集中力の低下などが起こる可能性があります。


腎性貧血の検査

腎性貧血の検査腎性貧血の診断には、血液検査が行われます。ヘモグロビン値や赤血球数の低下がみられます。場合によってはエリスロポエチンを測定します。また、腎性貧血以外の貧血の原因を見つけるために、以下のような検査も行われます。

鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血は、腎性貧血患者の約50%に合併すると米国の国民健康・栄養調査のデータ用いた研究で報告されています。鉄欠乏がある場合、腎性貧血治療の効果を減弱させます。そのため、腎性貧血の管理において、鉄欠乏の評価と治療は不可欠になります。

フェリチンとは?

フェリチンは体内の鉄貯蔵タンパク質です。主に以下の役割や臨床の指標になります。

鉄の貯蔵

体内の過剰な鉄を保管します。

鉄の供給

必要に応じて鉄を放出し、体内の鉄バランスを調整します。

貧血の指標

血中フェリチン濃度は体内の鉄貯蔵量を反映するため、鉄欠乏性貧血の診断に利用されます。腎不全がある場合は、血清フェリチン濃度<100 ng/mLの場合は、鉄補充を行います。女性の場合は、30ng/mL以下であると貧血がなくても(ヘモグロビン濃度が正常)、貧血症状が出ます。そのため、貧血症状がある場合は、ヘモグロビン濃度のみではなくフェリチンを測定することが大切です。

炎症マーカー

炎症時に増加するため、一部の疾患の診断に用いられます。

ビタミンB12欠乏、葉酸欠乏

高齢者、栄養不良や胃切除後の患者では、これらビタミンが欠乏していることがあります。

亜鉛欠乏

亜鉛は、微量元素であり、赤血球の増殖やヘモグロビンの合成に必要であり、亜鉛欠乏は貧血の原因となります。慢性腎臓病患者では、食事制限による亜鉛摂取量の低下や、尿中への亜鉛排泄増加により、亜鉛欠乏を生じやすいです。

これらの検査結果を総合的に判断し、腎性貧血や他の原因による貧血の診断が行われます。
また貧血の原因は、上記以外にも様々な疾患がありますので患者さんの状態に応じて追加検査をする必要があります。例えば、慢性炎症や悪性腫瘍による貧血、溶血性貧血、骨髄異形成症候群など、様々な疾患が貧血の原因となります。


腎性貧血の治療

腎性貧血の治療には、以下のような方法があります。

赤血球造血刺激因子製剤(ESA)の投与

エリスロポエチンの作用を補うために、ESAを皮下注射で投与します。初期治療は1週間あるいは2週間に1回の皮下注射を行い、維持療法では2週間あるいは4週間に1回の投与を行います。ESA治療は、腎性貧血の第一選択薬として広く使用されています。

HIF-PH阻害薬の内服

HIFという転写因子を活性化させることで、エリスロポエチンの産生を促進する経口内服薬です。1日1回あるいは週に3回の内服を行います。HIF-PH阻害薬は、比較的新しい腎性貧血治療薬であります。ESA治療とは異なる作用機序であり、ESA治療抵抗性の貧血への効果や、投与経路の利便性(経口内服薬であること)などのメリットがあります。

鉄剤の補充

鉄欠乏を合併している場合には、鉄剤の経口投与や静脈投与が行われます。経口の鉄剤は消化器症状(嘔気など)の副作用が多いことが知られていましたが、最近ではリオナ®(クエン酸第二鉄水和物)が鉄欠乏性貧血の保険適用となり、治療薬として使用できるようになりました。リオナ®は消化器症状が少ないとされており、経口鉄剤の選択肢が広がっています。ただし、重度の鉄欠乏や消化吸収障害がある場合などは、静脈投与が選択されることもあります。

腎性貧血の治療は、慢性腎臓病の進行度合いや症状に応じて、腎臓内科専門医と相談しながら行われます。
腎性貧血は、慢性腎臓病の進行に伴って起こる合併症の一つです。適切な治療を行うことで、倦怠感や疲労感などの症状を改善し、生活の質を維持することができます。腎性貧血について不明な点がありましたら、当院までご相談ください。

参考文献

  1. Fishbane S, et al. Iron indices in chronic kidney disease in the National Health and Nutritional Examination Survey 1988-2004. Clin J Am Soc Nephrol. 2009;4(1):57-61.
  2. Improving Global Outcomes (KDIGO) Anemia Work Group. KDIGO Clinical Practice Guideline for Anemia in Chronic Kidney Disease. Kidney Int Suppl. 2012;2(4):279-335.