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手足のむくみ

浮腫(edema)とは

浮腫は、体内の組織に過剰な水分が貯留することで起こるむくみのことを指します。手足、特に足のむくみが最も一般的ですが、全身性に現れることもあります。浮腫は、日常生活に支障が生じるだけでなく、重篤な疾患による症状の可能性があるため、適切な評価と診断が大切です。


浮腫の種類

a) 圧痕性浮腫(Pitting edema)

指で押すと圧痕(指の痕が残る)ができるタイプのむくみです。水分が間質に貯留することで起こります。圧痕性浮腫は、全身性の疾患や局所の循環障害など、様々な原因で生じます。

b) 非圧痕性浮腫(Non-pitting edema)

指で押しても圧痕ができないタイプのむくみです。間質ではなく、細胞内に水分が貯留することで起こります。非圧痕性浮腫は、リンパ浮腫や甲状腺機能低下症など、特定の疾患で見られることが多いです。


主な原因疾患

a) Pitting edemaの原因疾患

慢性腎臓病

腎機能の低下により、水分や塩分の排泄が困難になり、体内に貯留することで浮腫が生じます。

慢性腎臓病

うっ血性心不全

心臓のポンプ機能が低下し、静脈圧が上昇することで、毛細血管から間質への水分移動が増加し、浮腫が生じます。

ネフローゼ症候群

腎臓にある糸球体の障害により、大量のタンパク質が尿中に漏れ出し(タンパク尿)、血液中のタンパク質濃度が低下することで、浮腫が生じます。

肝硬変

肝不全により、アルブミンの産生が低下し、血管内の浸透圧が低下することで、浮腫が生じます。

深部静脈血栓症

下肢の深部静脈に血栓が形成され、静脈還流が障害されることで、下肢の浮腫が生じます。

低アルブミン血症

栄養不良や消化吸収障害(タンパク漏出性胃腸症候群など)により、血清アルブミン濃度が低下することで、浮腫を生じます。

薬剤性

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、カルシウム拮抗薬(降圧剤の一種)、ACE阻害薬、抗菌薬、抗癌剤などにより生じます。

b) Non-pitting edemaの原因疾患

リンパ浮腫

リンパ管の閉塞や機能不全により、間質の水分がリンパ管に吸収されず、浮腫が生じます。リンパ浮腫の原因は、悪性腫瘍(乳癌、子宮癌や前立腺癌など)の治療時のリンパ節の切除や、放射線治療、一部の薬物療法などがあります。また、感染症や外傷でもリンパ浮腫が起こることがあります。

甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンの低下により、全身の代謝が低下し、粘液水腫が生じます。これが非圧痕性浮腫の原因となります。

脂肪浮腫

主に女性の下肢に生じます。脂肪細胞の異常増殖により、下肢の皮下脂肪が過剰に蓄積することで両側性に生じます。肥満とは異なり、ダイエットや運動で改善せず、進行すると皮膚の線維化や脂肪組織の壊死により疼痛などを引き起こすこともあります。

局所の炎症

虫刺されや火傷などにより皮膚の炎症を起こすと浮腫を認めることがあります。また、皮膚組織の感染により発赤・圧痛・熱感を伴うことがあり(=蜂窩織炎といわれる疾患)、抗菌薬治療が必要となります。壊死性筋膜炎という急速に悪化をする重篤な疾患と鑑別が必要になりますので、疑わしい場合は早急に医療機関に受診することが大切です。


慢性腎臓病による浮腫の治療方法

慢性腎臓病による浮腫は、腎機能の低下により水分や塩分の排泄が困難になることで起こります。治療の基本は、水分や塩分の制限と利尿薬の使用です。治療の効果が乏しい場合は、透析療法が必要なります。


ネフローゼ症候群による浮腫の治療方法

ネフローゼ症候群は、腎臓の糸球体の障害により大量のタンパク質が尿中に漏れ出すことで起こる症候群です。治療の基本は、原疾患(糸球体腎炎など)の治療となり、ステロイド薬や免疫抑制薬が使用されることが多いです。また、浮腫に対しては、利尿薬やアルブミン製剤の投与などが行われることがあります。
手足のむくみは、様々な原因で起こります。そのため、疾患によって治療方法は異なります。むくみが持続する場合は、腎臓病をはじめとする重大な疾患が隠れている可能性があります。早めに受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。むくみに気づいたら(特に急激な体重増加を認める場合)、早めに医療機関を受診してください。

参考文献

  1. 安田隆. 浮腫の鑑別診断と治療. 日本内科学会雑誌 2013; 102: 1343-1349.
  2. 小川聡. 浮腫の診断と治療. 日本医事新報 2017; 4849: 32-36.
  3. 松尾清一. ネフローゼ症候群の治療. 日本腎臓学会誌 2015; 57: 1219-1224.